【いつ成立した?】
西洋手相術は、その名の通り西洋で生まれた手相術のことです。はっきりとした成立年は分かりません。ただし、紀元前4000年頃、中東のバビロニア王国で星と神々を組み合わせて、占う西洋占星術が生まれた頃にすでにあったのでは? と思います。
アリストテレス(前384-前322)が『動物誌』の中で「長命の人の手掌には直交する2本の線条か1本の線があるが,短命の人のは直交していない」と記載するなど、すでに古代ギリシャ時代には占いとして成立していたということが伺えます。
【キリスト教と占い】
キリスト教では手相を含め、「占い」を禁じています。このため、キリスト教がその勢力を伸ばしてから、ヨーロッパ地域では手相占いそのものは、表立って発展することはありませんでした。
【手相と印刷】
西洋手相術が注目されたのは、15世紀に入ってから。ドイツで活版印刷が発明されて、聖書が最初に印刷されました。1454年頃の話です。聖書の後にさまざまな書籍が印刷されましたが、その中の一つが手相の本(上記の写真)です。手相本は活版印刷ではなくて、挿絵や文字が一緒に入っている木版印刷で印刷されました。
昔の人も手相には興味津々。作ったのは、ヨハンネス・ハルトリープ(JohannesHartlieb)。医師でドイツのバイエルン公爵アルブレヒト3世のお抱え医師になりました。書いた書籍は『Die Kunst Ciromantia』(手相占いの芸術)。出版されたのは1448年頃です。現在のような興味本位の手相本として出版されたのではなく、「叛きの罪」である手相占いの手法はこれほど(当たっていて)恐ろしい、という悪魔の手法の分析本として書かれたようです。アルブレヒト3世の娘でアンナというお姫様に献上されました。写真は写本で、オーストリアをフランス軍が占領した時に、帝国図書館から勝手に持ち出したものらしいです。
【写真の手相には何が書かれている?】
ちなみに、この手の写本には、以下のことが書かれています。
「berg」は「山」という意味。手相において、各指の頂点にあるため、指の象徴する意味(知恵、野心、感情、努力など)がピークに達することを示している可能性があります。
手のひらの中央付近の「Das ist die lin des lebns」は、「これが生命線です」という意味。生命線を指し示していることを表しています。
手の中央から親指方向に伸びる線付近の「Das ist die lin des kopfs」は「これが頭脳線です」という意味。頭脳線が示されていることを意味します。
小指の根本から人差し指と中指の間に入っている線は「Die lin des hertzen」。「これが感情線(心臓線)です」という意味。感情線の位置を示しています。
手首から中指に向かって伸びる線は、「Das ist die lin des glücks」。「これが幸運線(運命線)です」という意味です。運命線の位置を示しています。幸運の線と解釈されています。
手首には「Die crus masern」と書かれています。これは「手首の測定線(または交差線)」と解釈されます。手首の線が意味を持つことを示唆しています。